「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例」(共生社会推進条例)についての代表質問は、2月20日の本会議で「坂元・荒井」を代表して荒井勇雄議員からも行われました。荒井議員の質問は、少数会派として質問時間が限られている中、共生社会推進条例に全振りした内容で、質量とも前日の小竹議員の追及に劣らないものでした。前半にあった偏向報道についての質問も興味深く、全質疑を掲載しました。


代表質問 マスコミの偏向報道に対する対処について
【荒井議員】
昨年末より報道により、議会内や世間を騒がせております荒井でございます。時間が大変限られておりますので、早速質問に入らせてまいります。
まずは、本市の報道機関を含めました市民の情報発信のあり方について市長に質問をさせていただきます。昨今、マスメディアの報道姿勢に関して、多くの市民から公平公正な報道がなされていないんじゃないか?と疑念の声が寄せられております。
報道の自由は民主主義の根幹を支える重要な要素であり、私自身、報道の独立性は尊重すべきものと考えております。しかしながら、一部の報道が特定の立場や意図をことさら強調し、異なる意見を十分に伝えない傾向があるのも事実であります。
1993年の政治的偏向報道を犯した「椿事件」をはじめ、第一通報者を犯人であるかのごとく連日報道し冤罪を巻き起こした94年の「松本サリン事件」、直近の米国大統領選挙報道においても片方の候補の一方的なネガティブ報道を繰り返され、報道においては真逆の選挙結果が出たのも記憶に新しいところであります。つまり、民意に基づいた報道ではなく、何らかの意図的、ないし思惑を持って報道がなされたと言わざるを得ません。
また、我が国が最も人的損失・経済制裁をこうむった先の大戦においても、当時マスコミが過剰な国民世論を焚きつけ、結果国土を焦土化されたのは歴史的事実であります。
その上で昨年末より当事者である私と坂本議員は一部の報道機関から偏った報道に連日振り回され、事実を大いに歪曲される事案が起きました。その結果、事実関係を誤認した市民からの誹謗中傷を受けた限りであります。
マスメディアとして権力を監視する上で政治家への批判は、我が会派は必要なことと考えており、我々も政治の世界に身を置くことで、当然のことと認識をしております。
しかしながら、国民市民の財産である公共の電波を使い、事実関係を誤認される報道に関しては権力の濫用そのものではないでしょうか?
今回、最も核心にある合意形成のあった契約上の問題を、取引業者との双方合意のもと金銭が支払われ、領収書を発行した事実を、抜き打ち取材で確認しながら、切り取りに切り取り報道を重ね、あたかも着服横領不正を行ったのごとく印象を与える報道し、著しく市民の誤解を招く行動は、放送倫理協会の倫理規定を大きく逸脱していると捉えることしかできず、全くもって看過できないのであります。
我々のローカルテレビ報道5回、映像によるヤフーニュース全国報道5回は、道内で起きた国会議員の「IR汚職契約問題」、政権与党の「収支報告書不記載問題」と報道回数および報道時間を比べましても、社会的問題性の観点から、多くの一般市民でけではなく、他の報道機関からも明らかに公平性を欠いた報道であるとお声を頂戴いたしました。
さて、マスコミについての報道においても、札幌市の本意が報道されているとは思えない状況が続いております。少々古い話がありますが、日本ハムが札幌を去った際、市の交渉努力、市の本意が正確に報道されたとは到底思えないのであります。
また、1割の高齢者が全予算半分の約25億円以上を消費している敬老パス制度の改定のシーン。あたかも全高齢者が反対したかのごとく報道。サイレントマジョリティーを無視した報道。本市のオリンピック招致にあたっての公平中立じゃない一方的なネガティブ報道、本市の真意が市民に伝わらず、行政と市民とのお互いの理解や関係が意図的に分断されている状況には目に余るものがあります。社会的な悪影響は計り知れず、本市としても市民理解が進まず、多大な損失を受けていると捉えざるを得ません。
その上で、世界経済フォーラムのメンバーであるハンスロスリング氏は、スイスのダボス会議において多くの有識者に対する誤認を証明し、世界の諸問題の事実に基づく世界の見方を重要性を訴えられ、注目を浴びました。氏その著書やファクトフルネスの社会の諸問題に対する認識の誤謬を提示したように、データや客観的事実に基づかず、公平性を著しく欠く、イメージ報道は、世界の指導者、政治家、著名人だけでなく、国際社会全体の問題認識を本質から逸脱し、誤解を生む検証結果を証明しております。
そこで質問いたしますが、このようなマスメディアの偏向報道を防ぐためにも、市民の知る権利を守るための情報公開や、市民が直接情報を得られる機会を増やすことが重要だと考えますが、過度な偏向報道について市長はどのようにお考えかお聞かせ願います。
代表質問 共生条例は一方的な価値観の押しつけではないか?
【荒井議員】
次に「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例」について本市が提案した条例案、いわゆる「共生条例」案に関して慎重な討論を求める立場から質問をいたします。
札幌の共生条例案はその条文において、誰もが等しく共生的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されながら、共に生きていくことは私たちの共通の願いであります」との理念が定められております。
しかしながらその理念を実現する過程で、個人の思想信条や多様性の確保がどのように担保されるのか? 共生の名の下に市民の表現の自由や、意見の相違が抑圧されないかといった不安が市民から上がっております。
多様性、包摂性、DEIは国際的にも、本家の米国で度々問題となり、議題となっており、パリオリンピックの過剰なジェンダー平等を前面に押し出した演出、その過剰なジェンダー政策は国民の分断を招き入れる。社会の混乱を招いたことで、大統領が白紙に戻す決断をされた周知の事実かと思います。
その上で政治思想家カリフォルニアのエミリー・フィンレイはその著書『民主至上主義』において「民主主義が絶対的価値として優先されると個人の自由や多様な価値観が抑圧される可能性がある」と警鐘を鳴らしております。
民主主義は万能との発想が行き過ぎると、異なる価値観を持つ人々が民主的でないとされ、多様性のもとで思想統制の危険および社会に排除される危険性があると指摘しております。一言で申し上げますと、金持ちおよび特権階級の誤った社会的正義の押し付けだということでございます。
札幌市共生条例案にあって、強制理念に反する行為を規制する可能性はあるのでしょうか? 例えば、日本に基づいている宗教的信念や伝統的価値観を持つ市民が共生の理念にそぐわないとみなされ、意見表明の機会が制限される恐れはないのでしょうか?
パブリックコメントを拝見するに、本条例素案が逆に一方的な価値観の押し付けに繋がる懸念はないか? といった市民の声が上がっておるのも確かにございます。
次に自治体の条例としての適正範囲の明確として、共生条例案は社会的な公正を目的としておりますが、その内容は国の法体系とどのように整合性を持つのでしょうか? 例えば男女共同参画は、性の多様性、独自の概念を提示しておりますが、この内容にはまさに当事者であるDSD性分化疾患の方々が、一部人権侵害に当たると声を上げていらっしゃいます。
このように地方自治体が独自に共生を定義し、それを市民に求めることが自治体の権限を逸脱する可能性はないのでしょうか? 特定の価値観を推進することが、むしろ市民の分断を生む可能性を指摘され、実際に本条例が上程された今、まさに市民分断が起きている状況であります。
具体的な効果と実施体制について本条例が成立した場合、どのような施策が実施されるか不明であり、過去に類似の条例を制定した自治体において条例による明確な効果があったのか、客観的なデータ提示が必要であります。我が会派が調べたところ、共生条例の実現に向けて、ある種強制力の持つ条例は他都市で確認することができませんでした。
仮に条例による規制が発生する場合、その判断基準は、誰がどのように起こるのか、市民に提示されていません。
住民の意見反映と透明性の確保として、本条例について市民の理解と合意が不十分なまま条例が制定されることないよう慎重な議論を求めます。
最後に性的マジョリティーの当事者からも、すでに社会に馴染んでいる性的少数少数者や事業者にとって、札幌市が昨年策定した事業計画である「ユニバーサル展開プログラム」が終了した後も。恒常的に残る本条例案に対しては条文内の問題を放置したまま制定してもいいいいものなのかといった声も上がっております。
以上の点から、私は本条例が拙速に進めることを大変懸念を抱いております。共生を推進する一方で、個人の思想信条や自由、多様な価値観が尊重される仕組みをどのように構築するのか。価値観の強制ではなく、市民同士を対話を重視した政策のあり方を改めて考えるべきじゃないのか。
札幌市は、真に多様性を尊重し、市民の自由を守る都市であり続けるために、市民理解をより深める慎重な議論を強く求めます。
そこで質問でありますが、今回は一度立ち止まり、敬老パス改正の民意改正のように、丁寧に市民に説明を施し、多様な意見を聞くべきと思いますが、市長のお考えをお伺いします。時間をオーバーしてしまいましたが、以上、私の質問となります。ご清聴ありがとうざいました。
市長答弁 共生条例は誰もが安心して生活するためのよりどころ
【秋元市長】
2項目にわたりご質問いただきました。私からは2項目めの「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例」についてお答えをさせていただきます。もう一点の市民への情報発信のあり方につきましては、担当の町田副市長からお答えをさせていただきます。「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例」についてお答えをさせていただきます。
本条例案は、誰もが当事者との考えを前提として、外部有識者会議での議論を始め、市民ワークショップの開催や高校大学等における若い人たちとの意見交換などによって、様々な立場の方から多様な意見を伺いながら検討を進めてきたところであります。
多様なご意見がある中で、少子高齢化の進行、外国人の増加などといった札幌市が直面する社会情勢の変化を踏まえますと、価値観や考え方の異なる方同士が、対話等を通じて互いに理解し、支え合う共生社会の必要性を改めて認識をしたところであります。
従いまして本条例は、特定の価値観や考え方を押し付けるものではなく、誰もが安心して生活するためのよりどころとして制定を目指しているものであり、本条例に基づき様々な立場の方々との意見交換を重ねながら、ともに理解を深めていく、そういう「誰もがつながり合う共生のまち」の実現に向けて取り組んでいるまいりたいとこのように考えております。
副市長答弁 市民への情報発信のあり方について
【町田副市長】
私からは大きな1項目目、市民への情報発信のあり方についてお答え申し上げます。これまでも様々な施策について市民の理解促進を図るため、報道機関への正確、迅速な情報提供に努めているほか、広報誌やホームページ、SNSなどを活用して直接市政情報を発信しているところでございます。
今後も時代の変化を的確に捉え、様々な広報媒体を効果的に活用しながら情報発信してまいりたいと考えるところでございます。以上でございます。
再質問 逆差別が起こりうる懸念
【荒井議員】
ご答弁ありがとうございます。共生条例に関して再質問させていただきたいと思います。
この条例は理念条例とおっしゃいましたが、条例案第6条を拝見させていただきますと、文末がなかなか強い表現になっております。
「共生社会の実現に向けた取り組みを行うよう努めるものとする」「共生社会の政策に協力するよう努めるものとする」。「努めるものとする」ということは、努めるも、務めないも各々の判断でとはならないのであります。条例によって結果はともかく、ここに努める義務が生じるわけです。これは多様性を持つ札幌市民に極めて大きな要求をつけ続けていることに他ならないと思います。
ましてや今回、市民からの意見は圧倒的に反対と懸念を示すものです。「努める」すなわち努力目標とされている事柄を必要条件として運用したり、掲げている条例を、一部のための優遇ルールとして運用したりということが起こりうるのではないかと危惧するものであります。
そこで市長に再質問をさせていただきます。当該条例は理念条例とのことでありますが、条文中に努力義務がうたわれております。今回の条例案では、本国米国で連邦最高裁で違憲と判断されました「アファーマティブアクション」のような特定の団体や個人が優先されるという逆差別が起こりうる懸念が大いにございますが、市長のお考えをお聞かせください。答弁を求めます。
再答弁 特定の個人、団体を優遇するものではない
【秋元市長】
再質問いただきまして、1点はアファーマティブアクション、いわゆる積極的格差是正措置ということだというふうに思いますけれども、この是非についての議論は多々あろうかと思います。一定程度のマイノリティの方を守っていく、そのための政策と、それが過剰になってはいけないっていう両方のご意見ということがある、ということは認識をしております。
先ほど申し上げましたけれども、本条例については共生社会の実現に向けて、市民、それから事業者、行政が連携をして、共同で同じ意識の中で、その社会を実現をしていこうというものであります。
いわゆる行政サイドについての努力義務的な規定ございますけれども、これはあくまでもそういった特定の個人、あるいは団体、こういった方々を優遇をするというかたち、それを義務付けるものではないというふうに認識をしており。
再々質問 法で市民を縛るのが本当に正しい姿か
【荒井議員】
ご答弁ありがとうございます。再質問にあたりまして簡潔に申し伝えたいと思いますが、しかしこれだけ影響力の強い案件は会派としても看過できない事案と考えております。
昨日の小竹議員の質疑による市長答弁を拝聴するに、札幌国際金融都市として確立する上で、海外の方々との共生を実現するために本条例が必要だとする考えには我が会派としても大変大いに賛同をさせていただくところであります。
しかしながら、市長公約、市長ビジョンを実現するにあたり、一定の強制力を伴う条例、すなわち法で市民を縛るのが本当に正しい札幌の姿なのでしょうか? そうではなく、国際金融都市を目指すに当たり、市が率先して政策を立案実行し、その姿を市民に範を示すことこそ、本来の札幌のあるべき姿ではないでしょうか?
例えば、埼玉県川口で起こっております特定の人種の移民問題を繰り返さないよう、日本語教育を早期から行い、犯罪抑止策に進める政策を行うですとか、今月迎えた健康記念日の札幌が町を挙げて式典を行い、祝うですとか、またニュージーランド、オーストラリア、アメリカ、フランス諸外国から問題されており、札幌でも現在発生している日本の実子誘拐問題に対し、面会交流の担保や誘拐の抑止をする政策を早期に実現し、外国人や海外の高度人材を呼び込む上で、これらの政策、今挙げた3点はいずれも本市において必要な政策であり、条例を制定せずとも行政で行える施策であります。特に後者2点に関しては、国際常識に照らし合わせても行っていかなければいけない、早急の事案であります。
そこで再質問でございますが、一定の拘束力あり、市民から多数の反発の声が上がっている本条例を制定するのではなく、市が率先して共生社会の実現のための政策を各部局が実行することによって、本市が目指す国際金融都市を確立すべきだと思いますが、市長のお考えをお知らせください。
再々答弁 やはり企業や市民の共有が必要
【秋元市長】
昨日答弁をさせていただいた中にも、これからの札幌のまちについて、国内外からの様々な人材を札幌に呼び、求めて、そのいろいろな価値、多様な価値を実現をしてもらう、力を発揮してもらう、そういった社会を実現していくことは非常に重要だというふうに思っております。
今ご質問のように、それは行政の政策の中でいろいろな手立てをとればいいのではないかというお話だというふうに理解しました。
確かにその部分はあるというふうに思いますが、例えば海外から来られる方は、家族と一緒に来られる。そうすると自分の家族、あるいは子供の教育、こういったようなことについても、今住んでいるところと同じような生活が日本に来てできるのか、ということがやはり関心事になると思います。
そうしていきますと、その社会の中でどのような、あるいは医療体制だったり、教育体制だったり、あるいはその市民の皆さんの受けとめ、こういったものが、どういう地域都市なのかと。同じような生活をしていける年なのかどうか、安心していけるのかどうか、ということがやはり重要になってくると、行政の政策政策だけでは実現できずに、やはり企業や市民の皆さんが、そういったことを共有して、多くの方を受け入れていく、そういう社会でなければならないというふうに思います。ですから、そのことを共有するための条例ということで提案をさせていただいております。
いろいろなパブリックコメントなどでのご不安等については、昨日も申し上げましたように、具体的な個々の、例えば外国人の方とのトラブルこういったようなことなどについては、トラブルにならないように取り組まなければいけないわけでありまして、それは行政サイドももちろんでありますけど、やっぱり市民の皆さん、企業の皆さんにもお互いを理解をして、その解決をしていくということに取り組んでいかなければいただかなければいけない。
そのためには行政サイドの政策だけでは実現をしていけないと、そういうものだという認識をして条例の提案をさせていただいております。
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