令和7年札幌市議会第一回定例会で、「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例」(共生条例)が制定されました。2000を超えるパブリックコメント、100を超える陳情によって、この条例に対するさまざまな疑念が示された中で、熟議を求める声に耳を傾けず札幌市は条例の制定を強行しました。
一方で、これら市民意見が呼び水となって条例に対する議会議論が活性化し、懸念に対する質疑応答の中で多くの「言質」が得られたことは、運動の大きな成果です。
本サイトでは、2月19日、代表質問での共生条例についての自民党小竹ともこ議員の質疑、20日の「坂元・荒井」荒井勇雄議員の質疑、3月11日第一予算特別委員会の共生条例集中審議における自民党川田ただひさ議員、荒井勇雄議員の質疑を紹介してきたところですが、ここでは3月11日第一予算特別委員会で行われた残りの質疑について紹介します。まずは自由民主党 村松叶啓議員と民主市民連合松原淳二議員の審議です。
公明党前川議員、日本共産党太田議員、市民ネットワーク北海道米倉議員については後刻紹介します。
- 2月19日本会議:小竹ともこ議員(自由民主党)
- 2月20日本会議:荒井勇雄議員(坂元・荒井)
- 3月11日第一部予算特別委員会:村松叶啓議員(自由民主党)※下段
- 3月11日第一部予算特別委員会:松原淳二議員(民主市民連合)※下段
- 3月11日第一部予算特別委員会:前川隆史議員(公明党)
- 3月11日第一部予算特別委員会:太田秀子議員(日本共産党)
- 3月11日第一部予算特別委員会:荒井勇雄議員(坂元・荒井)
- 3月11日第一部予算特別委員会:川田ただひさ議員(自由民主党)
- 3月11日第一部予算特別委員会:米倉みな子議員(市民ネットワーク北海道)
自由民主党 村松叶啓議員(北区)
懸念にどのように向き合うのか
【村松委員】
私からは、「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例案」について伺います。
我が会派は、本定例会の代表質問において、本条例案に関する質問を市長に直接投げかけ、市長からは「まさにこれから札幌が成長していくためには、国内外を問わず、多様な人材とその能力を札幌に集積をしていく、多様な人たちが活躍できる場を作っていくことが重要であるとの認識のもと、仮にこの条例等が否定をされるということは、むしろ、札幌はそういう国際性許容性に反対している都市だということを表明してしまうことになってしまうのではないか、そのことを大変懸念している」などとの見解が示されたところであります。
これは、千歳市への半導体製造工場の進出や、労働力不足が顕在化している現状を踏まえ、外国人材を含む、多様な市民が活躍する環境づくりが求められるといった、札幌市が直面する社会情勢に加え、札幌市がGXの推進を始めとして外国からの投資獲得に力を入れているという点を意識した発言だと認識しています。
そうした中で、このたびの条例制定の可否が、果たして外国からの投資獲得や外国人の受け入れにあたり、どれほどの影響を及ぼすのか、我々としても正直予測できないものであります。
そこでまず質問ですが、グローバル化が進む昨今において、札幌市が外国人の受け入れや投資獲得等も視野に入れながら、対外的な発信力を高めていくにあたり、本条例の制定・非制定がどのような影響を及ぼすと思っているのか、市の考えを伺います。
【山内プロジェクト担当部長兼ユニバーサル推進室長】
ユニバーサル推進室長の山内でございます。本日はよろしくお願いします。
ただいまのご質問、本条例の制定・非制定の影響についてお答えいたします。本条例は、市市民事業者による連携協働のもと、多様性と摂性を強みとした共生社会の実現を目指すことを掲げております。
今後、札幌市が世界に誇る都市として成長していくためには、多様な人材が集い、誰もが活躍することもできる共生社会の実現が不可欠であると認識しているところでございます。
昨今、介護や建設業、あるいは自動車運送業などにおける労働力不足への対応が求められている他、投資獲得という視点においては企業価値の向上に繋げる人的資本経営、その実践が求められているところであり、今後のまちづくりに際しては、外国人を含めた多様な人材が活躍できる環境づくりが必要不可欠と考えております。
そうした中、本条例は、国内外に向けて、札幌という街が共生社会の実現に本気で取り組んでいるというメッセージを強く発信するものであり、本条例の制定は国内外から選ばれる魅力あふれる都市を目指す上で大変重要なものであると考えております。以上でございます。
【村松委員】
本条例は、札幌市が国内外の方から選ばれる魅力あふれる都市になるために必要不可欠との答弁でありました。
一方で、本条例については、パブリックコメントや先ほどの陳情において数多くの懸念等が示されたことは事実であり、また本条例の制定に疑念を持つ方の価値観や考え方についても、本条例が目指す多様性の一つとして、これらを受け入れていくべきものでものであると思います。
このため、条例の運用においては、こうした方に対する丁寧な説明が求められるものと思いますし、また様々な懸念を有する方々を置き去りにした共生社会は、あってはならないものと考えます。
そこで質問ですが、条例の運用に当たり、条例に関して懸念等を有する方々に対して、札幌市は今後どのように向き合っていく考えか伺います。
【山内室長】
懸念等を有する方への今後の対応についてのご質問でございました。委員ご指摘の通り、この度のパブリックコメントや陳情を通して共生社会の実現に向けては、様々なご懸念があることは改めて認識しているところでございます。
共生社会は、様々な考え方や立場を有する方の存在が社会の成長に繋がるという多様性の尊重を前提としているものと考えております。本条例はこうした考えを盛り込んでいるところであり、ご意見をいただいた方に対しては、本条例の制定後においても、引き続き条例本条例の内容や考え方などを丁寧に説明していきながら、その制定を一つのきっかけに更なる対話を重ねていく考えでございます。
加えまして懸念等の解消に資する具体的な施策や事業を実施していく考えであり、誰もが安心して生活できるまちづくりを積極的に推進してまいりたいと考えております。以上でございます。
【村松委員】
具体的な懸念等を有する方々には丁寧に対応していく考えとのことでありました。では最後に市長に直接お伺いいたします。
共生社会の実現に向けた取り組みに関しては、我が会派はこれまで、本条例や、昨年6月に策定した行政計画である「ユニバーサル展開プログラム」に関し、代表質問や総務委員会等において、都度その議論を重ねてまいりました。
しかし、今回のパブリックコメントや陳情等で明らかになったように、共生社会の実現に向けては、いまだ多様な課題があると思われます。
そこで質問ですが、様々な課題がある中、市は共生社会をどのように実現していくべきと考え、またその考えを、本条例案にどのように反映しているのか、市長の考えを伺います。
【秋元市長】
今回のこの条例案の基本的な考え方としては、様々な立場の人たち、こういった人たちが、それぞれをお互いを理解をして、そして支え合っていく、そういう社会の実現ということが、これまで以上に必要になってくるだろうと。
それは、例えば外国からの市民。こういった人たちが増えてくるということが想定をされていく。そういった中で先ほどの陳情の中でも、いろいろな課題、不安、懸念というようなことがあろうかと思います。
そういったことを一つ一つ解決していくためにも、お互いの立場を理解をしていく、というのを基本的な、人権を尊重し合っていくということが、この条例の基本的な考え方というふうに理解をしております。
先ほどの陳情のご説明をいただいた方の中で、例えばその他の自治体の条例との比較がございました。
これらの先ほどご説明があった条例は、いわゆる規制条例とする、例えばヘイトスピーチなどを規制する条例であります。そういった条例の中では、行き過ぎた規制が起きないような歯どめというのが条例の中にも必要であろうということで、先ほどあった表現の自由などに対する記載があるものと理解をしております。
ここでぜひ皆さんにご理解をいただきたいのは、そういった何らかの行為を規制をすることを目的とする条例と、今回提出させていただいている条例は、そういう規制条例ではなくて、みんなでそういう社会を実現していくための、いわゆる理念条例であります。
したがいまして、その中のいろいろな規制をしていくということになれば、具体的な事柄の定義、範囲ということをしていかなければいけないわけでありますけれども、そういった条例ではなく、またこの条例で全てのことが解決をしていけるかということ、そうではなくて、この条例をもとにいろいろな議論を進めていく、そういう環境を作っていくということが、一番重要であろうというふうに考えております。以上です。
【村松委員】
ありがとうございます。市長の思いはわかりました。一方で、本条例は、共生社会の実現に向けた理念条例とのことであるものの、実際に具体的な課題に直接向き合っていくためには、個別の施策や事業を通じてということになります。
我が会派としましては、この札幌を、世界から選ばれる都市として成長させていきたいという想いについては、市長と考えを同じくするところですが、本条例を根拠として、関係施策や事業が漫然と行われる。あるいは本条例などに懸念等を有する方を置き去りにするような状況は決してあってはならないものと考えています。
具体的な個別の施策や事業については、丁寧な議会議論などを経て、その必要性や是非を決定していく必要があるものであり、毎年度の予算審議に際しては、我々としても市政の一翼を担う立場として、是々非々で検証してまいりたいと考えており、札幌市側においては、本条例に関する議会議論等を踏まえ、こうした視点を決して忘れないようにしていただく必要があります。以上を強く求めて、私からの質問は終わります。
民主市民連合 松原淳二議員(厚別区)
共生条例施策の進捗管理はどうするのか?
【松原委員】
私からも、議案第16号「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例案」並びに関連する陳情を踏まえての条例案について何点か質問をさせていただきます。
まず、本条例に関するブリックコメントの結果を拝見しますと、一つとして外国人市民の増加やそれに伴う治安の悪化を懸念する声が最多という状況であります。
二つ目として条例のいかんに関わらず、文化や慣習の異なる外国人との共生という観点について心配されている方が多いことが改めてわかったところです。
本市においても、外国人市民が直近10年で約2倍になるなど急増していることに伴い、市民が観光以外の外国人を見かける機会が増えるとともに、日頃の暮らしの中でも直接関わりを持つ機会が増えていることなどがその要因だと思っております。
先ほどの質疑でも少し触れられておりましたが、さっきの代表質問の質疑において市長は外国人市民の増加について、国内外を問わず様々な人材、そういった能力を札幌に集積をしていき、そういう人たちが活躍できる場を作っていくことが、まさに札幌の成長に繋がっていくとの認識を示しているところです。
答弁にあった札幌の成長に繋がるための多文化共生施策を推進するにあたって、本条例に関する議論のみならず、外国人市民の増加によるまちづくりの影響、効果なども市民に丁寧に説明をすることが大変重要なことだと認識します。
そこで質問しますが、本市における今後の外国人人口の将来見通しとその根拠、および本市における外国人市民の増加によるまちづくりへの効果について改めて伺います。
【山内ユニバーサル推進室長】
ユニバーサル推進室長の山内でございます。外国籍市民の増加によるまちづくりへの効果についてのご質問にお答えいたします。
札幌市では国による在留資格である特定技能の拡大等を受けまして、現在外国籍市民の増加傾向が続いており、今後も千歳市への次世代半導体の製造拠点整備などを背景として、より一層増加していくことができる状況でございます。
こうした中、本市では昨年3月に「札幌市文化共生国際交流基本方針」を策定し、目指す姿として「世界中の多様な人々とともに生きる都市札幌」を掲げている他、現在策定中の「第3札幌未来創生プラン」においても、人口減少への望みとして外部人材に選ばれる環境を盛り込んでいるところでございます。。
外国人を含めた多様な人材の活躍促進は、介護や建設業、自動車運送業などにおける労働力不足への対応のみならず、イノベーション技術革新等々でございますけども、こういったことなどの新しい価値の創造や国際競争力の獲得などが期待されることから、今後も国籍に関わらず誰もが安心して暮らすことができる社会を目指して取り組みを進めていく考えでございます。以上でございます。
【松原委員】
今後も外国人人口が増える見通しということで、外国人を含めた多様な人材の活躍促進といったことは、今後の労働力不足への対応のみならず、イノベーションなどの新しい価値の創造や国際競争力の獲得などが期待されているとのことであります。
人口減少局面に移行し、生産年齢人口の減少による働き手、担い手不足が深刻化するとともに、国際金融特区はさらにDX推進を始め、海外からの投資や企業進出などを目指す本市にとっては、今後の外国人の増加は不可欠なことだと考えますし、活躍の環境整備を整えるそういったことも不可欠なことだと認識をします。
次に、先ほど指摘した二つ目となる生活習慣や文化の違い等による日常生活上のトラブルへの対応についてお伺いしたいと思います。
我が会派は、2024年第3回定例会の代表質問において、外国人市民の増加に伴い、生活習慣や文化の違い等による日常生活上のトラブルなどを心配する方がいると指摘したところです。
この点について、このたびの陳情やパブリックコメントの意見でも寄せられており、本条例案や、外国人をその対象に含むことを懸念されている方が、改めて多くいるということが見えてきました。
具体的なことはこの場ではご紹介しませんが、先ほども少しお話がありましたが、マナーの悪い外国人に嫌な思いをさせられた。自身の権利の主張、自分たちの宗教や生活様式等への配慮を求める。こういった声などが聞かれ、それらから外国人と日本人の間に生まれる軋轢。不法移民、そして治安の悪化を懸念する意見が寄せられているというところです。
しかしこれらの意見を全て外国人市民の増加への懸念という一言で片付けるのは……少し……ひとくくりにするべきではないと考えます。
不法移民や不法滞在者などにおいては国の入国管理制度などの制度の課題、またそれを抜け穴として入ってくるといった課題と、外国人が日本の文化やマナーを知らない、そのことによって起きるトラブルこれらを解消するといったことは、おのずとその対応方法については異なるかと考えます。しっかり分けて議論すべきだと思っております。
そこで質問ですが、本条例の制定が外国人による治安の悪化等に繋がるとの指摘について、本市としてどのように受け止め、具体的に対応していくか、お伺いいたします。
【山内室長】
外国籍市民増加による懸念への対応においてお答えいたします。委員ご指摘の通り、いわゆる不法滞在は在留管理制度の問題であり、出入国管理庁などにより適正に対応されるものと考えております。
その上でございますが、人手不足等を背景として、本市で暮らす外国人は、今後一層の増加が見込まれることから、日本人との軋轢を予防するための取り組みが重要になると認識しているところでございます。
具体的な対応でございますが、外国籍市民に対して日本語や日本の生活ルールを学ぶ機会を提供することに加え、受け入れ側である日本人に対しても、外国文化の理解促進に向けた取り組みを実施していくことが必要と考えております。
こうした取り組みを確実に実施することで、受け入れ側の日本人市民の不安を取り除きながら、外国人にも選ばれる誰もがつながり合う共生のまちづくりこれを進めてまいりたいと考えております。以上でございます。
外国人市民の増加に伴う取り組み、すなわち多文化施策については、本市が共生社会を目指していく上で欠くことのできないことかなと考えます。今後も力を入れて実施していくよう期待したいと思います。
【松原委員】
次に改めて共生社会の実現に向けた本市の果たすべき役割について伺います。本市が率先して取り組みを進めていく意思を示す市の責務として、本条例案の第5条で「市は基本理念にのっとり、共生社会の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に推進しなければならない」と明記されております。
我が会派は、2024年度総務委員会で、この総合的かつ計画的と表現する推進手法についてただしたところ、2023年度に設置した市長を本部長とする「ユニバーサル推進本部」の枠組みを活用し、翌年制定した「ユニバーサル展開プログラム」の適切な進捗管理などを通じて、施策全体の最適化や継続的な改善向上に庁内一丸となって取り組んでいきたい旨の答弁がありました。
この点、共生社会の実現に向けて関係施策全体を俯瞰し、本市が実際にあった適切な取り組みを実施していく上では、効果的な進捗管理が極めて重要になるものと考えます。
しかし、本条例では附属機関の設置も定められているところであり、この附属機関が総合的かつ計画的な施策の推進にどのように寄与、関与していくのかについて、これまで配布されている資料などを読み解くと、なかなか明確になっていないものと考えます。
そこで質問ですが、本条例に基づき今後具体的にどのような体制や流れで関係者の進捗管理を行っていくのか伺います。
【山内室長】
関係施策の進捗管理についてのご質問でございました。委員ご指摘の通り、共生社会の実現に向けた取り組みに関しては、効果的な進捗管理が極めて重要になると認識しております。
このような認識のもと、質問にもございましたが、庁内組織である「札幌市ユニバーサル推進本部」、それから本条例に基づき、新たに設置される市民や外部有識者等で構成される「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり委員会」、これら二つの組織体を両輪で運営し、丁寧に進捗管理をしていく考えでございます。
個々の事業については、毎年度の議会審議に加えまして、各分野で別途設置している付属機関等において具体的かつ詳細に審議されたことから、本条例に基づく「ユニバーサル推進本部」や「共生のまちづくり委員会」においては、戦略上で設定している生活者証やユニバーサル展開プログラムに掲げる事業目標の進捗等を毎年度把握しつつ、特に施策間連携、官民連携等の視点から取り組みの検証改善を行っていく考えでございます。以上でございます。
【松浦委員】
庁内の推進体制と新たに設置する附属機関は両輪でをしていく丁寧に進捗管理をしていくとの考え方でございますので、私達も期待をしながらもその状況については確認をしていきたいと思っております。
本条例の制定は、本市全体で共生社会の実現に向けて取り組むスタートでしかございません。先ほど来あるように、これで全てが解決するものではありません。今後は、今後も本市は様々な課題への対応が必要となってくるものと思います。
この本条例については、今より市民のみならず、これから来ようとしてくる市民にも共有をしていただきながら、双方でこの理念を理解する必要があります。
市・市民・事業者が連携協働して取り組むしっかり取り組みを進めていけるよう検討を進めるとともに、私達もしっかり議論をしながら、市民とも議論を行いながら進めていくことを求めて私からの質問とさせていただきます。
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