共生条例集中審議、札幌市議会の3月11日第一予算特別委員会で行われた公明党前川隆史議員、日本共産党太田秀子議員、市民ネットワーク北海道米倉みな子議員の質疑を紹介します。
ここで令和7年第1回定例会における共生条例審議の質疑を下記にまとめます。
- 2月19日本会議:小竹ともこ議員(自由民主党)
- 2月20日本会議:荒井勇雄議員(坂元・荒井)
- 3月11日第一部予算特別委員会:村松叶啓議員(自由民主党)
- 3月11日第一部予算特別委員会:松原淳二議員(民主市民連合)
- 3月11日第一部予算特別委員会:前川隆史議員(公明党)※下段
- 3月11日第一部予算特別委員会:太田秀子議員(日本共産党)※下段
- 3月11日第一部予算特別委員会:荒井勇雄議員(坂元・荒井)
- 3月11日第一部予算特別委員会:川田ただひさ議員(自由民主党)
- 3月11日第一部予算特別委員会:米倉みな子議員(市民ネットワーク北海道)※下段
公明党 前川隆史議員
生命尊厳の時代を目指して更なる共生社会の推進
【前川委員】
私からも「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例案」についてお伺いをしたいと思います。
本条例案は、その「基本的な考え方」の中でも言及されております通り、「誰もが当事者」との考えのもと、条例の対象を検討し、限定しない点に一つ特徴があるものと認識をしておるところでございます。
この点に関しまして、陳情やパブリックコメントの中には、「高齢者や障害のある方の生きづらさは主に心身の状況に起因するものであるとし、これと対比する形で性的マイノリティや外国人、アイヌ民族の生きづらさは、これらの方を取り巻く社会に起因するもの」との認識と認識した上で、「これらをひとくくりにしてしまうと、それぞれの問題の個別性が失われる」とのご指摘があったとこでございます。
また、「誰もが当事者との考え方では、市の施策が後者の性的マイノリティ等の施策に偏り、そのことからくる軋轢や制度的な不均衡が発生する」といったことなどを懸念する声があったところでございます。
そこでまず伺いますが、その「誰もが当事者」とする本条例の対象に関するこれらの懸念について市の考えを伺いたいと思います。
【山口ユニバーサル推進室長】
ユニバーサル推進室長の山内でございます。条例の対象に関する懸念についてのご質問でございました。
まず障害のある方について、障害者差別解消法では、「障害の社会モデル」、すなわち「障害やバリアは個人の心身機能の障害と、それから物理的、制度的文化、情報面および意識上に置かれる社会的障壁の相互作用によってづくり出されるもので、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である」という考え方が採用されているところでございます。
このことからも、障害のある方の生きづらさは身体機能に起因するものに限られるものではないと認識しているところでございます。
また障害のある方のみならず、女性や高齢者、外国人なども例えば情報面のバリアや偏見や無理解などを基づく無理解などに基づく意識上のバリアに直面する場面があることから、本市といたしましては、この「社会モデル」の考え方は、障害の障害以外の様々な分野にも波及できる考え方であると認識しているところでございます。
こうした認識のもと、本市といたしましては誰もが「自分事」として捉えられるよう、本条例の対象を限定してこなかったところでございます。
なお、共生社会の実現に向けた各施策については、個々にその必要性を精査した上で実施等の判断を適切に行っていく考えでございます。以上でございます。
【前川委員】
対象対象者を限定しない、お考えを伺いました。続いて、この本条例の制定による関係施策の継続性の担保、それから取り組みの加速化といった点に関して懸念の声がございましたことから、こうした行為に関するお考えを伺いたいと思います。
この行為の内容といたしましては、札幌市は、「第二次まちづくり政策ビジョン・アクションプラン2023」における「行政運営の取り組み」として、行政コストの最適化による効率的な行政運営の実行を掲げていることなどをまず指摘した上で、それにもかかわらず、「本条例が制定されると、施策とし支援策等について必要な検証が検証などがなされないまま実行されてしまうといった、その永続的な財政支出の恐れがあるのではないか」というものでございます。
そこで伺いますが、本条例案に伴う施策の実施と、適切な行政運営の確保との関係性をどのように考えているのか、市の考えを伺いたいと思います。
【山内室長】
本条例案に伴う施策の実施と、適切な行政運営との関係性についてのご質問でございます。
本条例案は、共生社会の実現に向けた市の関係施策の進捗管理等を行うために、庁内に設置している「ユニバーサル本部」それから市民有識者等で構成する附属機関の設置についての規定を設けており、これらは行政運営を適切に行う上でも不可欠なものであると認識しているところでございます。
また、本条例案には、施策の実施に必要な財政措置についての規定を設けているところでございますが、個別の施策や事業の立案、実施に当たっては、これまでも毎年度の予算審議等を通じて都度議会にもお諮りしながら、その必要性を精査してきているところでございます。
本条例案の関連施策や事業についても、客観性のある評価指標の設定や毎年度の効果検証によって、その立案や見直しを適時適切に行っていく考えでございます。以上でございます。
【前川委員】
札幌市はこの本条例の検討に際しまして、パブリックコメントのみならず多様な機会において市民等との意見を重ねてきたと伺っております。
このことにつきまして、先日の代表質問では市長から外部有識者会議での議論を始め、市民ワークショップの開催や、高校や大学等における意見交換などにより、様々な立場の方から多様な意見を伺いながら検討を進めてきた、そういった答弁があったところでございます。
さきの代表質問でも、また本日の議論においても、このパブリックコメントや陳情などについて多くの質疑がなされておりますが、本条例については、我が会派としてもこれまで代表質問や委員会議論などで質疑を重ねてまいりましたが、昨年の第3回定例市議会では、我が会派の方から、次世代を担う子供や若者に対する取り組みを行う重要性について市の姿勢を正すなどしておりまして、子供・若者がどのように考え、どのような声を寄せてくれたのか、という点にも大変関心があるところでございますし、また次の世代へ、時代の主役である子供や若者の意見は極めて事業であると思うところもございます。
そこで伺いますが本条例に関して、札幌市が実施した子供・若者との意見交換の概要と、具体的な意見内容についてお伺いしたいと思います。
【山内室長】
子供若・者との意見交換の概要等についてお答えいたします。
本条例の検討にあたっては、次世代を担う子供・若者の意見を積極的に聴取、反映させるべく、大通高校、札幌西高校、開成中等教育学校および札幌市立大学などにおいて意見交換を実施してきたところでございます。
各校での意見交換でいただいた言葉をいくつかここでご紹介させていただきます。例えば「違いが当たり前になる社会になれば良い」といった声ですとか、「理念として振り返るべきよりどころとして、条例を形に残すことは必要」といった声があった他、「性別や国による差別はまだ消えていない部分があるので、先入観を持たないことが大切だと思う」「条例はその町の意識を形づくる意味のあるものだと思う」といった声が寄せられております。
加えまして、共生社会の実現に向けた取り組みに関する意見として、「今の時代、お互いを知らなさすぎるということが、障壁を生み出しているのではないかと感じているので、交流する場や機会が設けられると良い」といった声もあったところでございます。以上でございます。
【前川委員】
ただいまの答弁を伺いまして、札幌の次代を担う子供たちがまさに共生社会を自分事として捉えて、条例の制定後も見据えた意見を持っていることがわかりまして、このことについては心強く感じたところでございます。
一方で、本日の質疑や陳情者のお話、各種報道やSNSなどで展開される様々な主張を聞くにつけ、共生社会実現の難しさというものも深く感じるところでございます。
先日、大手全国紙の記者がわざわざ大阪から私のところに取材に来られました。これから共生社会へいかに進むべきなのか、新聞社としても一つの結論を見出したいとのことで、今回の札幌市の条例制定の動きに注目したとのことでございました。
共生とは、理想と現実の狭間で、少しでも現実を理想に近づける挑戦であると思います。どこかにゴールがあるのではなく、その挑戦をし続ける社会であり、そこに共生社会を目指す本質があるのではないか、とも私は感じるところでございます。
札幌市は「SDGs未来都市」でございます。また、日本で5都市目の「フェアトレードタウン」にも認定されました。フェアトレードの運動では、生涯出会うことではことがないであろう海の向こうに生きる国籍も民族も宗教も違う人々の苦悩に思いを馳せて、心を砕き、具体的な行動を起こす取り組み・運動でございます。
今フェアトレード運動の最前線で活躍しているのが、若い学生の皆さんであります。札幌市や近郊の大学が連帯をして、相互間の国際交流も進めながら、粘り強く挑戦をしており、私も時折フェアトレードのイベントに参加させていただいたところでございます。
差別のない公正な社会実現のために、途上国の経済的・社会的に弱い立場にある生産者と、経済的社会的に強い立場にある先進国の消費者が、対等な立場で行う貿易推進に全力で頑張っておられまして、学生たちの熱情の高まりに感動を覚えているところでございます。
そこで最後に市長に共生社会の意義についてお伺いしたいと思います。
共生社会の歩みや、ともすれば思想信条や民族・宗教・国籍・人種・貧富など、人間間の差異・違いというものが鮮明になり、ときに先鋭化し、対立に繋がりかねない部分もあるかと思います。
決してたやすい道のりではございませんが、この困難な共生社会への道のりを進むことで、次の世界、また次の世代へと何を残していきたいという市長は考えになっていらっしゃるのか?
また、共生社会の実現は、人間と人間の心を結びゆくたゆみなき対話の実践が重要だと思いますが、この対話の意義についてあわせて市長のお考えを伺い、伺いたいと思います。
【秋元市長】
共生社会ということについて、そもそもお互いが、互いにその個性を尊重し合って、それがちゃんと社会の強みになっていく。そういう社会を目指そうということであります。
そういった中で、もちろん立場の違い、あるいは考え方の違い、こういったものについていろいろな見方があるのも事実だというふうに思います。
これまでの議論の中でも、様々な角度から、いろいろなご意見がある。そういったことを一人ひとりの人間がやっぱり幸福に暮らしていけるための方策をみんなで議論をして、対話を通して実現をしていくということを私達、模索をしていかなければいけないんだろうというふうに思います。
そういう意味では、非常にまさに考え方にいろいろな違いがある中で、それを議論を重ねて一つの方向性を見出していくというプロセスそのものが、非常に難しいことだというふうに思います。
しかしながら先ほど子供たちの意見の中で、やはりそういったことをお互いに理解をしながら、立場が違う、いろんな考え方が違うということなども含めて、それを理解し合って、お互い支え合っていく社会を作っていこう、という考え方、これはやはり非常に尊重をしていかなければいけないというふうに思いますし、そのことを私自身、子供たちがそう考えているということは、たくましく思います。
その実現に当たっては、先ほど来いろいろな懸念ですとか、いろんな不安の声等があって、例えば、いろんな事業を進めていく、市の政策を進めていくにあたって、その方策がより良いものであるのかどうか、これは個別の中の政策については様々な議論をし、また費用対効果、こういったものも含めながら政策を決定していくことだろうというふうに思います。
だからこの条例で全てのことを包括をして解決をしていくということは、この理念条例であるとなかなか難しいというふうに思います。
一方で、この理想に向けていろいろな議論を重ねていく。そして政策については、毎年の予算審議等の中で議会ともご議論をいただきながら進めていく。こういうプロセスを大事にしていって共生社会というものを実現をして未来に繋げていきたいとこのように考えております。
【前川委員】
ありがとうございます。共生社会のその過程プロセス、そしてまた多くの方々との対話・議論の重要性についてお話しいただきました。
人間への差別意識、差異、違いですね。このこだわりを克服していくことこそ、平和と普遍的人権の、創出の、第一義でありまして、開かれた対話を可能にしていく黄金律であると、このように思っております。
今この共生という考え方、また共生社会の実現に多くの方や自治体がその重要性や必要性を感じつつも、どうすればいいのかと模索し、苦戦していると伺っております。
共生社会の定義に「ある誰もが」ということについて、先ほどの答弁では、「誰もが自分事として捉えられる」云々とございましたが、他人の苦しみに同苦していくその心、今対話の重要性についてやり取りもさせていただきましたが、自身の中に他者というものが欠落した対話は、形は会話のように見えても、一方的な言い合いに終始して、コミュニケーション不全となってしまうこのようにも思います。
ブラジルの大天文学者モウラン博士は、父君の教えとしてこのように語っておられました。「人間の考えは、たとえ今がどうであれ、それが最後まで変わらないということはない」「偏見は必ず時とともに変えることができる」———とこのように教えられたそうでございます。
共生社会———まさにこの生命尊厳の時代を目指して、さらに深い議論はもとよりですね、対話の流れというものをより深く、またより広くですね、皆様とともに推進していこう、というふうに呼びかけさせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
日本共産党 太田秀子議員
さまざまな意見があるからこそしっかり推進
【太田委員】
私からも「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例案」と、それから先ほど趣旨説明いただきました陳情について、質問をいたします。
この条例案が言うところの共生社会とは「差別や偏見がなく、誰もが互いにその個性が尊重され、能力を発揮できる多様性と包摂性が強みとなる社会」ということを位置づけています。
年齢、性別、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、障害、病気、国籍、民族言語、宗教、文化など、これらの多様性を尊重したまちづくりということです。
今市長からも課題を解決するためにも、人権の尊重ですとか、個性を尊重していくんだというご答弁があったところです。
私、これまでの質疑を聞いて、札幌市における外国人の市民の数が増えているというところがありましたけれども、そこでちょっと思ったのは、永住している方が最も多くて、お仕事で来られるようなお話がちょっと多かったかと思いますけれども、学ぶために来ていたり、結婚してきていたりという方たちも多いと思うんですね。
反対に私達の友人や知人、その子供たちも、やはり他国で学んで仕事をしていると、結婚している子もいますしね、そういう割合も少なくありません。どの国にいても、国籍に関わらず安心して暮らせる社会であることが、やはり共生社会であり、どこの国でもそうあってほしいということを今感じたところでありました。
また、この質問をするに当たって性別、とりわけ男女について調べてみました。1975年、国連は「国際女性年」として、「第1回世界女性会議」をメキシコで開催いたしました。それから20年経った後の1995年「第4回世界女性会議」で採択された「北京宣言」の中で「ジェンダー」という文言が初めて盛り込まれました。
その後、日本政府は「男女共同参画社会基本法」を制定し、各市町村で条例制定が始まっていきました。この当時は、〝女性らしさ〟や〝男性らしさ〟がいけない、という考え方には納得できないですとか、ひな祭りや端午の節句を無くすつもりかとか、こういう「ジェンダーフリー」という言葉に大きな反響があったことを覚えています。
ジェンダーフリー教育になれば、更衣室が男女一緒になるなど、もちろん不安の声があるからでしょうけれども、このような質問が東京の議会で出たことを鮮明に思い出しました。
ジェンダーがなぜ問われるかといえば、国際的な指標で日本の女性の社会的地位の低さですとか、男女の賃金格差など、女性の人権の脆弱さがあり、これらの現実を改善したいというものです。
しかし、やはり議論が十分でないうちには、不安が拭えないという方も多いのではないかと、歴史を振り返ってみて思ったところです。
陳情者の方が先ほど、「何かあったら話し合って決めなさい」という1400年前の言葉をお話していましたけれども、まさにそういうことが今問われる時代だと思います。
私は「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例案」のパブリックコメント、また条例案に関する陳情書を全て読みました。札幌市内から提出された陳情は46通、札幌を除く道内が9通、道外からは53通と、関心の高さがうかがえます。
パブリックコメントの意見を見ますと、「差別の有無」についての意見がいくつかありました。「差別はない」という意見の方も一定数いることがよくわかりました。
ここで質問をいたします。共生社会の定義にも入って「差別の有無」に関する市の受け止めを伺いたいと思います。
【山内ユニバーサル推進室長】
ユニバーサル推進室長の山内でございます。差別の有無についての市の受け止めに関するご質問でございました。
札幌市や北海道などが実施した障害のある方や外国人、あるいはアイヌ民族等に関するアンケート調査の結果によると、残念ながら差別を受けたと感じている方が一定数いる状況は明らかとなっているところでございます。
差別がない社会は共生社会の大前提であり、札幌市といたしましては、差別や偏見については、互いの個性や能力を認め合い、各人が対話を重ねる中でなくしていくことが大切であると認識しているところでございます。
本条例は、こうした理念の浸透も目的としているところであり、まずは多様性の尊重等を進めていく中で、理解促進を図っていくことが重要であると考えているところでございます。以上でございます。
【太田委員】
差別とは、やはりその属性ですとか、特性を理由に、全ての人が生まれながらに持っている権利の行使を妨げることです。
面と向かってひどいことを言ったり、ひどい行いをしたりすると、それは「差別じゃないか」と、今の時代は多くの人がわかると思いますけれども、人々がこの無意識に共有している価値観ですとか、こうするのが当然だと、そういった空気感から生まれる差別というのは、なかなか気付きにくいものもあるだろうと思っています。
「差別を見たことも聞いたこともない」というパブリックコメントでの意見もありました。実際にそうなのだと思います。差別は私達のそばに存在していると意識しなければなりませんし、無関心であることによって、意図せず差別を受け入れてしまうと、そういう側になってしまうということにも思いを寄せることが必要だと思っています。
先ほどの答弁では、そアンケートなどの中で差別を受けているという方たちが一定数ある状況あるんだ、というご答弁でありました。実態調査によって特性があることで差別を受けるなどの嫌な思いをしたとか、困難を抱える傾向があるですとか、生きづらさを抱えているなど、事実としてそのような声があったわけです。
差別を受ける側だけの問題にせず、現実を知る機会を作ることが非常に重要だと思います。これは、これまでの質疑でもそういう思いが語られたかなと思いました。
陳情やパブリックコメントにおいては、共生社会の定義に差別や偏見という文言があるにもかかわらず、その具体的な定義がないことによって、差別の拡大解釈や特定者による恣意的な運用が起こり、結果として意図せずに新たな不安や問題を生じさせるのではないかと、こういう懸念からこの文言を削除するべきと、そういう意見もありました。
ここで伺います。差別や偏見という文言をなくすべきとするこのような意見について、本市としてどのような受け止めをされているのか伺います。
【山内室長】
差別や偏見という文言についてのご質問でございました。先ほど述べました通り、各種アンケート調査の結果等によると、差別を受けたと感じている方が一定数いる状況ではございますが、一方で個々の行動や発言が差別等に当たるかについては、その内容やそれらが行われた具体的な場面やその程度を十分に踏まえて、客観的、総合的に判断されるべきものと考えております。
このため、理念条例たる本条例案においては、差別や偏見に関する具体的な定義は設けていないところでございます。
本市といたしましては、本条例の理念を浸透させることなどを通して、市民の様々な不安などを取り除いていけるような取り組みを進めていく考えでございます。以上でございます。
【太田委員】
今のご答弁からしますと、やはり「差別だろう」と思っている場面がどうだったか、その程度はどうなのか、ということで、理念条例としては定義付けはしていませんよというお話でした。
私はこの質問をするにあたっていろいろ勉強しましたけれども、やはり憲法14条に基づいた、こういう条例を作っていこうということなんだなということを理解しているところです。
私は先日の新聞報道でこのような記事を読みました。目が不自由な方は、点字ブロックの途中でそのブロックが途切れますととても困るんですけれども、車椅子を利用する方は点字ブロックに苦労しているという記事がありました。
また知り合いの方からは、今セルフレジやタッチパネルがとても便利になったという一面もありますけれども、視覚障害がある方にとっては新たな障壁なんだと、そういうことも伺いました。
今障害を持った方を例えにしましたけれども、どこに生きづらさがあるのか、誰にどのような苦しみや不便をもたらしているのか、繋がって共有してこそ、誰にとってもやさしい街になるのではないかと思います。
私、先ほどこのたびの条例が、やはり憲法14条に基づいて作られていくんだろうというふうに感じたというふうに言いましたけれども、そういう認識でいいかどうか、再質問したいと思います。
【山内室長】
憲法とこの条例に関する関係性についてのご質問でございます。
本条例については憲法の考え方っていうのは、当然その土台にしておりまして、基本的人権の尊重というのは、ここは普遍的な考え方というところに立っております。
したがいまして、この条例についても同じようにそのことを尊重しながら、改めて札幌市としてその多様性を尊重して、共生のまちづくりを進めていくという、そういう条例にしたいところでございます。以上でございます。
【太田委員】
ありがとうございます。最後になりますけれども、2017年に「札幌市パートナーシップ宣誓制度」が開始されています。
当時はこの札幌市でも少子化が進むのではないか、ですとか、家族制度や結婚制度が崩れるのではないかなど懸念する声があったそうです。
そのとき、本市の担当者の方は、「当事者の方たちがこんなふうに思われているんだ、このような偏見の中で暮らしているんだと、そう思った」と言っています。だからこそ制度が必要だと、そういう思いを強めたんだと、そうお話ししているのを私は報道で知ることとなりました。
まさに気がつかなかったんだけれども、差別や偏見によって生きづらさを抱えている人が身近にいたんだなということに気づいたとそういうことだと思いました。
この宣誓制度ができた以降どうなっているでしょうか? 制度が導入された以降で私は市民への理解が広がっていったと、そういうふうに思っているんです。
ですから、このたびの条例案は、様々な意見があるからこそ、しっかりと対話をしていくとそういう機会を作っていくものにしていただきたいというふうに思っております。以上で私の質問を終わります。
市民ネットワーク北海道 米倉みな子議員
個人の尊厳が守られる社会は誰もが生きやすい社会
【米倉委員】
私からは、議案第16号「札幌市が誰もがつながり合う共生のまちづくり条例案」について質問いたします。
市民ネットワーク北海道は、これまであらゆる差別のない共生社会の実現を繰り返し求めてきました。私達が目指す共生社会は、年齢性別、性自認や性的指向、国籍や民族、出自、障害などに関わらず、人それぞれの違いを認め合い、お互いを尊重し支え合う社会です。
「札幌市誰もがつながり合う共生のまちづくり条例案」については、昨年の第1回定例議会の代表質問でも取り上げ、本条例を実効性のあるものとするためには、基本的人権の尊重など、日本国憲法の理念を踏まえていく姿勢を明確に打ち出していくことを求め、市長からは基本的人権の尊重といった普遍的価値を十分に認識した上で、丁寧な検討を進めるとのご答弁でした。
条例案では第2条で共生社会について「差別や偏見がなく、誰もが互いにその個性を尊重され、能力を発揮できる多様性と包摂性が強みとなる社会」と定義しています。
相手も自分と同じ人間であり、心無い言葉を投げかけられば、誰でも胸が痛み、傷つくということを認識することが重要です。
札幌市においては、これまで特定の民族に対するヘイトスピーチが大通公園や公共施設で行われてきました。また、インターネット上では、特定の民族に対し、民族の尊厳を傷つける侮辱的な発言がしばしば見られます。
こうしたインターネット上などでの激しい差別表現、侮蔑の言葉によって当事者は傷つき、苦しんでいる現状を共有し、ヘイトスピーチは絶対に許さないという強い思いを発信し、差別をなくすために取り組むことが重要と考えます。
そこで質問ですが、差別や偏見をなくしていくために、札幌市としてどのように取り組んでいくのか伺います。
【山口ユニバーサル推進室長】
ユニバーサル推進室長の山内でございます。差別や偏見をなくすための取り組みについてお答えいたします。
差別や偏見をなくしていくためには、心のバリアフリー、すなわち、様々な心身の特性や考え方を持つ全ての人々が相互に理解を深めようとコミュニケーションを取り、支え合う、そういう意識のことでございますが、その醸成を積極的に図っていくことが大変重要と考えております。
そこで、本条例においても市が実施する基本的施策の中で、誰もが互いに理解し合い、支え合い、助け合う意識の醸成を位置づけたところでございます。
今後は、心のバリアフリーの普及促進のみならず、多様な立場の方が互いに理解を深め合うための対話の機会等を創出していく考えであり、市民事業者と連携協働しながら、差別や偏見のない共生社会を目指してまいりたいと考えております。以上でございます。
【米倉委員】
ありがとうございます。相互理解、そして支え合いの意識の醸成が大切だというご答弁でありました。
本条例案に対しては、パブリックコメントで否定的な意見が多く寄せられ、また、条例制定に反対する陳情が108件出さできるという状況にあります。
このような状況について、本定例会の代表質問で問われた市長は、「まさにこれから札幌が成長していくためには、国内外を問わず、多様な人材、そういった能力を札幌に集積していく。そういう人たちが活躍できる場を作っていくことが、札幌の成長に繋がっていくだろうというふうに思っています。仮にこの条例等が否定されるということは、むしろ札幌はそういう国際性許容性の反対をしている都市だということを表明してしまうことになるのではないかということを大変懸念しております」と答弁されました。
国際社会の中で、今後においても、札幌がさらに信頼される都市、選ばれる都市となりうるために、先々を見据えたご答弁であり、私も同様に思うところです。
近年は札幌市内においても、外国人が就労し、家族が私立学校に通うなど、外国人が身近に増えている現状があります。私が住んでいる地域でも、外国人の方、子供たちをよく見かけます。
彼らと言語や文化、生活習慣が異なることは当然であり、理解し尊重し合うことにより、お互いに住みやすい街を作っていくことが重要と考えます。
それは決して、ルールやマナーを守らずに行動していたとしても、許容するということではありません。例えばゴミ出しのマナーが守られていなければ、改善してもらう必要がありますし、夜中に騒音などがあれば止めてもらうように交渉すべきです。
これは日本人同士でも起こりうるトラブルですので、同様に考えることはできるはず、と私は考えます。
共生———共に生きるということは、お互いを理解し合い、人権を尊重し合い、共に思いやりを持って暮らすことだと私は思います。お互いの立場や事情を少しでも思いやることができれば、傷つけあうことなく、皆が幸せに共存できるのではないかと考えます。
そこで質問です。すでに他の会派の皆さんからも同様の質問が出ていますが、最後に改めて伺います。条例制定に否定的な意見が多く寄せられていますが、条例の必要性や条例の理念を広く理解していただくため、今後どのように取り組んでいくのか伺います。
【山口室長】
条例の普及啓発等々についてのご質問でございました。
委員ご指摘の通り、本条例に関しては数多くの懸念の声も寄せられたところでございます。引き続き丁寧な説明等が必要と認識しております。
仮に本条例が制定された場合におきましては、まずは条例の内容をわかりやすく説明するパンフレット等の啓発物を活用した発信を想定しているところでございます。
このパンフレットにつきましては、通常版に加えキッズ版や英語版の制作も想定するなど、幅広い方々に届くよう工夫していく考えでございます。
また出前講座等も並行して行う考えでございまして、多様な機会を通して、本条例の発信を進めてまいりたいと思います。以上でございます。
【米倉委員】
今後は工夫して丁寧に発信をしていくというお答えでした。先ほどの委員の方からの質問の中では、対話を重ねていくというご答弁もあったかと思います。
対話を重ね、相互理解を図っていくことは、どんな場面においても重要ですが、同じ地域で暮らす様々な住民が共生するためには、大切なプロセスだと考えます。
また、困りごとを抱えている人を孤立させないことも重要です。私達は見た目から姿や背格好が違い、生きてきた背景も思想信条もみんなそれぞれ違います。
しかし、共通点が一つだけあり、それは実が同じ人間だということです。日本国憲法にある基本的人権とは、全ての人が生まれながらにして持つ人間として尊重される権利です。個人の尊厳が守られる社会は、誰もが生きやすい社会です。
本条例が特定の人のためのものではなく、皆がともに幸せに生きていけるよう、性別や性自認、国籍や民族、出自などの違いで差別されることなく、お互いの理解を深め、尊重し合うまちづくりを進めるための指針となることを心より願って私の質問を終わります。
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